親から相続した横浜の実家を兄弟で共有している、離婚した元配偶者と家の名義が半分ずつのまま残っている。こうした共有名義の不動産は、売りたいと思っても「ほかの共有者が首を縦に振らない」「そもそも連絡がつかない」という壁にぶつかりがちです。
結論から言うと、不動産全体を売るには共有者全員の同意が必要ですが、自分の共有持分だけなら誰の同意も無く売却できます。ただし持分だけの売却は、不動産全体を売ったときの持分相当額よりかなり安くなります。
この記事では、共有名義の不動産を売る5つの方法と、反対する共有者や行方不明の共有者がいる場合の対処法、横浜市の区別の地価を使った持分価格の目安、物件の種類ごとの注意点、税金、相談先までを順に説明します。自分の状況でどの方法を選び、誰に相談すればよいかを決める材料にしてください。
横浜の共有名義不動産は自分だけでも売却できる?
自分ひとりの判断で売れるのは、自分の共有持分だけです。土地と建物の全体を売るには、共有者全員の同意がいります。この違いを押さえると、取れる方法と売却価格の見通しが立てやすくなります。
不動産全体の売却には原則として共有者全員の同意が必要
共有名義の不動産を丸ごと売ることは、民法上、共有物の「変更」にあたります。民法第251条は、共有物の変更には他の共有者全員の同意が必要だと定めています。持分の割合は関係ありません。持分が10分の9ある人でも、10分の1の共有者が反対すれば全体を売ることはできません。
実務でも、売買契約書への署名押印、実印と印鑑証明書、本人確認は共有者全員分がそろわないと決済できません。代表者1人が手続きを進める場合も、ほかの共有者からの委任状が必要です。
全員の同意は「売る」という方針だけでは足りず、売却価格・売却時期・費用負担・代金の分け方まで一致している必要があります。兄弟で「いずれ売る」と話していても、価格で折り合わずに何年も止まるケースは珍しくありません。
自分の共有持分だけなら他の共有者の同意なしで売却できる
共有持分は、不動産全体に対する「自分の所有権の割合」です。持分は各共有者がそれぞれ持つ財産なので、売ったり贈与したりするのに他の共有者の同意はいりません。
たとえば兄弟2人で実家を2分の1ずつ相続した場合、弟が反対していても、兄は自分の2分の1の持分を第三者に売れます。売買が成立すると、登記簿の兄の名義が買主に変わり、不動産は「弟と買主」の共有になります。
ここで誤解しやすいのが、持分を売っても家の一部を切り分けて渡すわけではない点です。買主が手に入れるのは「家全体を2分の1の割合で共有する権利」で、どの部屋を使えるといった区分はありません。この性質が、次に説明する売却先の限定と価格の低さにつながります。
共有持分の売却先は主に専門の買取業者になる
持分だけを買っても、その不動産に自由に住むことも、建て替えることも、単独で売ることもできません。一般の個人が住まい探しで共有持分を買うことはまず無く、仲介で広く買主を探しても見つからないのが普通です。
そのため、持分の売却先は事実上、ほかの共有者か、共有持分を専門に扱う買取業者の2つに絞られます。買取業者は買い取ったあと、残りの共有者と話し合って持分を買い取ったり、自分の持分を売ったりして共有状態を解消し、不動産全体として再販売することで利益を出します。話し合いがまとまらなければ、共有物分割請求の裁判を起こすこともあります。
この「解消までの手間と時間」を業者が引き受ける分、買取価格は不動産全体の持分相当額より低くなります。逆に言えば、売主は共有者との交渉を自分でしなくて済むかわりに、価格で対価を払う取引です。
共有名義の不動産を売却する5つの方法
共有名義の不動産を手放す方法は、共有者の協力が得られるかどうかで選べるものが変わります。手取り額が多いのは全員で全体を売る方法で、協力が得られないほど価格か時間のどちらかを犠牲にすることになります。
| 方法 | 他の共有者の協力 | 手取り額の目安 | かかる期間の目安 |
|---|---|---|---|
| 全員で不動産全体を売却 | 全員の同意が必要 | 市場価格×持分割合(最も高い) | 3〜6か月程度 |
| 持分を他の共有者に売却 | 買う共有者の合意が必要 | 話し合い次第 | 合意できれば短い |
| 他の共有者の持分を買い取って単独名義にしてから売却 | 売る共有者の合意と買取資金が必要 | 市場価格で売れる | 買取+売却で長め |
| 持分だけを買取業者に売却 | 不要 | 持分相当額より大きく下がる | 数週間〜1か月程度 |
| 共有物分割請求 | 不要(裁判所が判断) | 判決の内容次第 | 半年〜1年以上 |
期間は物件や話し合いの状況で大きく変わるため、目安として見てください。
共有者全員で合意して不動産全体を売却する
共有者全員が売却に賛成しているなら、不動産会社に仲介を頼んで一般の買主に全体を売るのが最も高く売れる方法です。売却代金から仲介手数料などの経費を引いた金額を、持分の割合で分けます。
進めるうえで決めておきたいのは、窓口になる代表者、最低売却価格、測量費や残置物の処分費といった経費の負担割合です。代表者以外の共有者は委任状を出し、決済の日に実印・印鑑証明書をそろえます。遠方に住む共有者がいても、司法書士が本人確認をすれば決済に立ち会わずに済む場合が多くあります。
売却で得た代金は持分どおりに分けるのが原則です。持分と違う割合で分けると、差額が贈与とみなされて贈与税がかかることがあります。
自分の共有持分を他の共有者に買い取ってもらう
ほかの共有者が「家は残したい」と考えているなら、自分の持分をその人に買い取ってもらう方法があります。相手は単独名義になって家を自由に使えるようになり、自分は現金を受け取れるため、双方の利害が一致しやすい方法です。
価格は当事者の合意で決まりますが、親族間で相場とかけ離れた安値で売ると、時価との差額が贈与とみなされるおそれがあります。不動産会社の査定書や不動産鑑定士の評価を取り、価格の根拠を残しておくと、税務上も親族間の納得の面でも安心です。
相手に買取資金が無いことも多い方法です。住宅ローンなどで資金を用意できるか、分割払いにするなら支払いが滞ったときの取り決めをどうするかまで、契約書に書いておく必要があります。
他の共有者の持分を買い取って単独名義にしてから売却する
自分がほかの共有者の持分を買い取って単独名義にし、そのうえで市場で売る方法です。単独名義になれば同意を取る相手がいなくなるため、売却価格も時期も自分で決められます。
この方法が向いているのは、ほかの共有者が「手放してもよいが、売却の手続きには関わりたくない」と考えているときです。持分を市場価格に近い金額で買い取り、全体を売った代金との差を自分が受け取る形になるため、買取資金を用意できる人には手取りを最大化しやすい方法といえます。
ただし買取時と売却時の両方で登記費用がかかり、取得した持分は所有期間が短いため、売却益が出ると短期譲渡所得として高い税率がかかる場合があります。買い取ってからすぐ売るつもりなら、税理士に試算を頼んでから決めると判断を誤りません。
自分の共有持分だけを専門の買取業者に売却する
ほかの共有者の協力が得られない、話し合い自体をしたくないという場合の現実的な選択肢が、共有持分を専門に扱う買取業者への売却です。同意はいらず、業者が直接買い取るので、査定から決済まで数週間〜1か月程度で終わることが多くあります。
最大の欠点は価格です。買取価格は、不動産全体の市場価格に持分割合をかけた金額より大きく下がります(詳しくは後述の価格の目安を参照)。一方で、仲介手数料がかからない、建物の不具合について売主の責任を免除する契約にできる、残置物をそのままにして売れるなど、手間とリスクは小さく済みます。
価格と手間のどちらを優先するかで選ぶ方法です。共有者との関係がこじれていて、時間をかけても全体売却の見込みが薄いなら、価格が下がっても持分売却のほうが結果的に損が少ないことがあります。
共有物分割請求によって共有状態の解消を目指す
各共有者は、いつでも共有物の分割を請求できます(民法第256条)。まず共有者間で協議し、まとまらなければ地方裁判所に共有物分割請求訴訟を起こします。横浜市内の不動産なら、管轄は原則として横浜地方裁判所です。
裁判所が命じる分割の方法は、土地を持分に応じて分ける「現物分割」、一部の共有者が不動産を取得してほかの共有者に代金を払う「賠償分割」、競売にかけて代金を分ける「換価分割」の3つです。賠償分割は2023年4月施行の改正民法で条文に明記されました。建物付きの土地や都市部の狭い土地は現物分割に向かないため、賠償分割か競売になるのが一般的です。
競売になると市場価格より安く落札されやすく、弁護士費用もかかります。判決まで半年から1年以上かかることも多いため、実際には訴訟を起こしたことをきっかけに和解で決着するケースが少なくありません。共有物分割請求は、話し合いが完全に行き詰まったときの最後の手段と考えるのが現実的です。
共有者が売却に反対している・連絡が取れない場合はどうする?
共有者の反対や音信不通で全体売却ができなくても、打つ手はあります。相手との関係と、どこまで時間をかけられるかで、話し合いを続けるか、持分を売るか、法的な手続きに進むかを選びます。
兄弟や親族が売却に反対している場合
相続した実家で多いのが、「親の家を売るのは忍びない」「いずれ値上がりするかもしれない」という理由で一部の兄弟が反対するケースです。反対の理由が感情なのか、お金なのかを見極めると、打つ手が変わります。
感情的な反対なら、固定資産税や修繕費などの維持費を持分に応じて負担し続けることになる点を、具体的な金額で示すと話が進みやすくなります。年間の固定資産税・都市計画税の納税通知書や、外壁・屋根の修繕見積もりを共有すると、「持ち続ける費用」が現実の数字として伝わります。
お金が理由なら、反対している兄弟に自分の持分を買い取ってもらう、逆に自分が相手の持分を買い取るといった、売却以外の解決策も選択肢になります。それでも話し合いが進まないときは、自分の持分だけを買取業者に売るか、共有物分割請求に進むかの判断になります。
持分を業者に売ると、残った兄弟は業者と共有する状態になり、業者から持分の売買を持ちかけられます。親族関係に与える影響が大きいため、売る前に「話し合いがまとまらなければ持分を売る」と相手に伝えておくと、後のトラブルを抑えられます。
離婚した元配偶者と共有名義になっている場合
夫婦で購入した家を共有名義のまま離婚した場合、まず確認したいのが財産分与の扱いです。離婚時に家をどうするか取り決めていなければ、財産分与の話し合いの中で売却や名義の整理を決めるのが本来の流れです。
財産分与を家庭裁判所に申し立てられる期間は、2026年4月1日以後に離婚した場合は離婚から5年、それより前に離婚した場合は2年です。この期間を過ぎると調停や審判で分与を求められなくなるため、時間がたつほど共有名義の整理は当事者同士の交渉か、共有物分割請求に頼ることになります。
元配偶者と顔を合わせたくない、連絡を取りたくないという理由で、持分を買取業者に売る人も少なくありません。その場合も、住宅ローンが残っているなら後述のとおり返済義務は残り、元配偶者が住み続けている家なら、業者と元配偶者の交渉が始まることになります。子どもが住んでいる家の場合は、生活への影響も踏まえて判断したほうがよいでしょう。
共有者と連絡が取れない・所在がわからない場合(所在等不明共有者の制度)
相続を重ねて共有者が増えると、会ったこともない親戚や、住所がわからない共有者が出てきます。こうした場合に使えるのが、2023年4月1日に施行された「所在等不明共有者」の制度です。
所在等不明共有者の制度には、裁判所の決定で不明な共有者の持分を自分が取得する方法(民法第262条の2)と、不明な共有者の持分も含めて不動産全体を第三者に売る権限を裁判所から得る方法(民法第262条の3)の2種類があります。どちらも、不明な共有者の持分に相当する時価を裁判所が定め、その金額を供託する必要があります。
使う前提として、登記簿や住民票、戸籍の附票などで調べても、相手の氏名や所在がわからないことが必要です。共有持分が相続によって共有になっている遺産共有の状態では、原則として相続開始から10年が経過しないと使えない点にも注意が必要です。
以前は、行方不明の共有者がいる場合、家庭裁判所に不在者財産管理人を選んでもらい、その管理人と売買の交渉をするしかありませんでした。新しい制度は不動産の所在地を管轄する地方裁判所に申し立てる手続きで、管理人の報酬負担が無いぶん使いやすくなっています。申立書の作成や所在調査の範囲には専門的な判断がいるため、司法書士か弁護士に依頼するのが一般的です。
横浜の共有持分はいくらで売れる?買取価格の目安
共有持分を買取業者に売る場合の価格は、不動産全体の市場価格に持分割合をかけた「持分相当額」の3〜6割程度に収まることが多いです。横浜市内でも区によって地価が2倍以上違うため、同じ2分の1の持分でも手取り額は物件の場所で大きく変わります。
共有持分の価格が不動産全体の持分相当額より低くなる理由
持分の価格が下がるのは、買った人がすぐにはその不動産を自由に使えないからです。買取業者は、残りの共有者との交渉、合意できなければ共有物分割請求の訴訟、最終的な再販売までを見込んで価格を決めます。
この間にかかる弁護士費用や登記費用、解決までの年数、交渉が不調に終わって競売になったときの値下がりリスクが、すべて買取価格から差し引かれます。共有者が多い、関係がこじれている、連絡がつかない共有者がいるといった事情があれば、それだけ解決の手間が増え、価格はさらに下がります。
一般の買主を相手にする仲介と違い、業者は自分が買い取る「最後の買い手」です。そのため持分相当額に近い価格が出ることはまず無く、価格の差は「共有状態を解消する手間」を業者に引き受けてもらう対価と考えると実態に合います。
横浜市内の戸建てを例にした持分2分の1・3分の1の価格の目安
横浜市の住宅地の平均価格は、令和8年の地価公示で1㎡あたり26万6,000円です(横浜市「地価のあらまし」)。土地120㎡の戸建てで、建物は築年数が古く価格がほとんど付かないと仮定すると、不動産全体の価格はおよそ3,200万円です。
この物件の持分を買取業者に売った場合の目安は、次のとおりです。
| 持分割合 | 持分相当額 | 買取価格の目安(持分相当額の3〜6割) |
|---|---|---|
| 2分の1 | 約1,600万円 | 約480万〜960万円 |
| 3分の1 | 約1,067万円 | 約320万〜640万円 |
地価公示は標準的な土地の価格で、実際の取引価格は駅からの距離や道路付け、土地の形で上下します。あくまで自分の持分がどのくらいの金額帯になるかをつかむための試算で、実際の価格は査定で確かめる必要があります。
全員で全体を売れば、2分の1の持分を持つ人は経費を除いて約1,600万円を受け取れます。持分だけを売ると手取りが半分以下になることもあるため、全体売却の可能性が少しでも残っているなら、先にそちらを探る価値があります。
共有持分の買取価格を左右する5つの要素
同じ持分割合でも、業者が提示する価格は次の要素で上下します。
| 要素 | 価格が上がりやすい | 価格が下がりやすい |
|---|---|---|
| 不動産全体の市場価格 | 駅に近い、需要の高いエリア | 郊外、斜面地、再建築不可 |
| 持分割合 | 2分の1以上など大きい持分 | 10分の1など小さい持分 |
| 共有者の人数 | 自分以外に1人 | 相続を重ねて多人数 |
| 他の共有者の状況 | 連絡がつき、買取や売却に応じる可能性がある | 行方不明、強く反対、関係が悪化 |
| 物件の状態・権利関係 | 空き家で権利関係が単純 | 共有者が住んでいる、抵当権がある、賃貸中 |
業者がとくに重く見るのは、ほかの共有者と話がまとまる見込みです。共有者が1人だけで、その人が「買い取ってもよい」「全体で売るなら応じる」という姿勢なら、業者は短期間で解決できるため価格を上げやすくなります。査定を頼むときは、共有者との関係や過去の話し合いの経緯を正直に伝えたほうが、根拠のある金額が出てきます。
エリアによる地価差が持分価格に与える影響
横浜市は18区で地価の差が大きい都市です。令和8年の地価公示による住宅地の平均価格を、120㎡の土地に当てはめると次のようになります。
| 区 | 住宅地平均価格(1㎡) | 120㎡の土地 | 持分2分の1の相当額 |
|---|---|---|---|
| 西区 | 42万5,400円 | 約5,100万円 | 約2,550万円 |
| 港北区 | 36万2,400円 | 約4,350万円 | 約2,170万円 |
| 青葉区 | 33万4,000円 | 約4,010万円 | 約2,000万円 |
| 戸塚区 | 21万8,100円 | 約2,620万円 | 約1,310万円 |
| 金沢区 | 19万9,000円 | 約2,390万円 | 約1,190万円 |
| 瀬谷区 | 19万5,100円 | 約2,340万円 | 約1,170万円 |
西区と瀬谷区では、同じ広さの土地でも価格に2倍以上の開きがあります。買取価格が持分相当額の3〜6割とすると、西区の2分の1持分は約770万〜1,530万円、瀬谷区では約350万〜700万円です。
地価の高い区ほど、業者にとって共有状態を解消したあとの再販売の利益が大きく、買取に積極的になりやすい傾向があります。反対に、郊外の駅から遠い斜面地などは、再販売のめどが立てにくいぶん持分の割合が低めに見積もられがちです。自分の物件の近くの地価は、横浜市の「よこはま地価マップ」や国土交通省の「不動産情報ライブラリ」で確認できます。
少しでも高く売却するための交渉とタイミング
価格を上げるうえで最も効くのは、複数の業者に査定を頼んで比べることです。共有持分の買取価格には決まった計算式が無く、業者ごとの再販売の見込みや得意エリアで提示額が変わります。少なくとも2〜3社から査定を取り、金額だけでなく、その金額になった理由を説明してもらうと比較しやすくなります。
ほかの共有者に、先に「持分を買い取らないか」と打診しておくのも有効です。共有者が買取に前向きだとわかっていれば、業者は解決の見込みが高いと判断でき、提示額が上がる余地があります。共有者本人がそのまま買ってくれれば、業者に売るより高い金額になることもあります。
タイミングでは、固定資産税の課税基準日である1月1日を意識しておくと無駄がありません。その年の固定資産税は1月1日時点の所有者に課税されるため、年明け前に決済を終えれば翌年度分の納税通知を受けずに済みます。売却益が出る場合は、所有期間が5年を超える年の1月1日を過ぎてから売ると、税率が大きく下がる点も確認しておきます(税率は後述)。
横浜の共有名義不動産を売却するときの物件別の注意点
共有名義の悩みは、物件の種類によって中身が変わります。空き家なら維持費、ローンが残る家なら返済、マンションなら管理費、横浜に多い斜面地の古い家なら再建築の可否と、物件ごとに先に確認すべき点があります。
相続した古い実家・空き家(維持費と固定資産税の負担)
誰も住んでいない実家を共有で持ち続けると、固定資産税・都市計画税、火災保険料、庭木の手入れや雨漏りの修繕費が毎年かかります。これらは持分に応じて共有者全員が負担するのが原則ですが、実際には近くに住む1人が立て替えたまま精算されず、不満がたまる原因になりがちです。
管理の行き届かない空き家は、2023年12月に施行された改正空家法で「管理不全空家等」に指定される可能性があります。市町村から指導を受けても改善せず勧告まで進むと、土地の固定資産税を最大6分の1に軽減している住宅用地特例が外れ、土地の税額が大きく上がります。共有者の誰も管理していない状態は、早めに売却を考える理由になります。
相続した空き家を売る場合は、売却益から最高3,000万円(相続人が3人以上なら2,000万円)を差し引ける「空き家の3,000万円特別控除」が使える場合があります。昭和56年5月31日以前に建てられた家であること、相続から3年後の年末までに売ることなどの要件があり、他の共有者などの親族に売る場合は対象になりません。持分だけを買取業者に売る場合も、建物の耐震改修か取り壊しの要件を満たしにくいため、使えるかどうかは売る前に税理士か税務署に確認しておくべきです。
住宅ローンが残っている共有名義の家(売却後も返済義務は残る)
ペアローンや連帯債務で買った家は、持分を売っても自分のローン返済の義務は消えません。売却代金で自分の借入れを完済できなければ、家に住んでいなくても返済を続けることになります。
家には金融機関の抵当権が付いているため、持分だけを売る場合も、買主は抵当権が付いたままの持分を引き受けることになります。抵当権付きの持分は買い手が限られ、価格もさらに下がりやすくなります。ローン契約で、金融機関の承諾なく持分を売ることを禁じている場合もあるため、まずは借入れ先の金融機関に契約内容を確認するのが先です。
全体を売っても残債が売却価格を上回る「オーバーローン」の場合、抵当権を外すには差額を手元資金で払うか、金融機関の同意を得て任意売却をする必要があります。離婚で共有名義になった家は、このローンの問題が売却の最大の壁になることが多いため、売却の検討と同時に金融機関への相談を始めるのが現実的です。
共有名義のマンション
マンションの共有名義も、全体を売るには共有者全員の同意が必要で、自分の持分だけなら単独で売れる点は戸建てと同じです。マンションは土地を分ける現物分割ができないため、共有物分割請求に進むと賠償分割か競売になります。
マンションに特有なのが、管理費と修繕積立金です。共有者の誰かが滞納していると、その滞納分は区分所有法第8条により買主にも請求できるため、買取業者は滞納額を差し引いて価格を決めます。売る前に管理会社に滞納の有無と金額を確認し、滞納があれば精算の方法を共有者間で決めておくと、査定額の下振れを防げます。
みなとみらいや横浜駅周辺など駅近のマンションは需要が高く、共有状態を解消したあとの再販売が見込みやすいため、持分の買取価格も比較的付きやすくなります。一方、築年数が古く大規模修繕を控えたマンションでは、一時金の負担見込みも価格に反映されます。
斜面地や狭い道路に面した再建築不可の土地・建物
横浜市は丘陵地が多く、急な階段の上にある住宅や、幅の狭い路地にしか接していない土地が少なくありません。建築基準法第43条では、建物を建てる土地は幅4m以上の道路に2m以上接している必要があり、この接道義務を満たさない土地は、今の建物を壊すと新しく建てられない「再建築不可」になります。
再建築不可の物件は、全体を売る場合でも買い手が限られ、価格は周辺相場より大きく下がります。共有持分になればさらに買い手が絞られるため、一般の共有持分の買取業者でも断られることがあります。再建築不可や訳あり物件を専門に扱う業者のほうが、買取に応じやすい傾向があります。
がけ地に建つ家では、擁壁の安全性や、がけ崩れの危険がある区域に指定されているかどうかも価格に影響します。査定の前に、横浜市の窓口や都市計画情報で接道状況と区域指定を確認しておくと、業者とのやり取りがスムーズです。隣地の一部を買い取って接道を確保できれば再建築が可能になる場合もあるため、売るか活かすかを決める前に、隣地所有者との話し合いの余地も探っておきたいところです。
共有持分だけを売却する前に知っておきたい注意点
持分の売却は同意がいらない手軽さの一方で、売ったあとに他の共有者との関係や税金に影響が出ます。契約してから知ると取り返しがつかないのは、売却が知られること、残された共有者とのトラブル、税金の3点です。
持分を売却すると他の共有者に知られる
持分を売ると、登記簿の名義が買主に移ります。登記簿は誰でも取得できるため、他の共有者が登記を確認すれば売却はわかります。
実際には、登記を確認するより先に、買取業者から他の共有者に連絡が入ることで知られるケースがほとんどです。業者は買い取ったあと、共有状態を解消するために残りの共有者と交渉するのが仕事だからです。売却の手続き自体は他の共有者に知らせずに進められますが、売ったあとまで知られずに済むことはまずありません。
親族間で「勝手に売った」と受け止められると、関係の修復は難しくなります。法律上は知らせる義務はありませんが、関係を保ちたい相手であれば、売却前に自分の考えを伝えておくほうが後々の摩擦は小さく済みます。
買取業者と残された共有者の間でトラブルになる場合がある
業者は買い取った持分をもとに、残りの共有者に対して「持分を売ってほしい」「こちらの持分を買い取ってほしい」と交渉します。話がまとまらなければ、共有物分割請求の訴訟を起こすこともあります。
共有者がその家に住んでいる場合は、業者から持分に応じた家賃相当額(使用の対価)を求められることもあります。残された親族からすれば、突然見知らぬ会社と共有することになり、不安や反発を招きやすい状況です。
売主自身は売却後のトラブルの当事者ではなくなりますが、親族から責められたり、関係が途絶えたりするおそれはあります。業者を選ぶ段階で、買い取ったあと他の共有者とどのように交渉するのか、強引な交渉をしない方針かを確認しておくと、残される側への影響を抑えられます。
売却によって譲渡所得税などが発生する場合がある
持分を売って利益(譲渡所得)が出ると、所得税・住民税がかかります。譲渡所得は、売却価格から取得費と譲渡費用を引き、使える特別控除を差し引いて計算します(国税庁 タックスアンサーNo.1440)。
税率は、売った年の1月1日時点で所有期間が5年を超えるかどうかで分かれます。
| 区分 | 所有期間 | 税率(所得税・復興特別所得税・住民税の合計) |
|---|---|---|
| 長期譲渡所得 | 5年超 | 20.315% |
| 短期譲渡所得 | 5年以下 | 39.63% |
相続した不動産は、亡くなった親が取得した日と取得費を引き継ぐため、親が長く持っていた家なら長期譲渡所得になるのが一般的です。親がいくらで買ったかわからない場合は、売却価格の5%を取得費とみなす「概算取得費」を使うため、売却益が大きく計算されやすくなります。
たとえば相続した実家の持分を800万円で売り、取得費がわからず概算取得費40万円、譲渡費用が10万円だった場合、譲渡所得は750万円で、長期譲渡所得の税額は約152万円になります。手取りを考えるときは、買取価格から税金を差し引いた金額で比較することが欠かせません。
相続税を納めていれば、相続から3年10か月以内の売却で相続税の一部を取得費に加算できる特例もあります。親の購入時の売買契約書が実家に残っていないか、売る前に探しておくと税額が大きく変わることがあります。
共有名義の不動産を売却するまでの流れ
共有名義の不動産の売却は、権利関係の確認から始まり、売却した翌年の確定申告で終わります。全体を売る場合も持分だけを売る場合も大まかな流れは共通で、違うのは契約に加わる人数と売却先です。
最初に、法務局で登記事項証明書(登記簿謄本)を取得し、「権利部(甲区)」で共有者の氏名・住所と各自の持分割合を確認します。登記事項証明書は、物件の所在地にかかわらず全国どの法務局でも、オンラインでも請求できます。
確認したいのは、登記上の共有者が今も全員存命か、住所が変わっていないかです。亡くなった共有者がいれば、その人の持分はすでに相続人に引き継がれており、話し合う相手が増えています。抵当権などの「権利部(乙区)」の記載もあわせて見ておくと、ローンの残り具合を確認する手がかりになります。
親から相続したのに名義が親のままなら、売る前に相続登記が必要です。この点は後述のよくある質問で説明します。
共有者と権利関係がわかったら、全体を売るのか、持分だけを売るのかを決めます。判断の軸は、他の共有者が協力してくれる見込みと、手取り額と時間のどちらを優先するかです。
他の共有者に連絡がつき、売却に反対していないなら、まずは全体売却を打診するのが手取りの面で有利です。打診の際は、売りたい理由と希望時期、費用負担の考え方を具体的に伝えると、相手も判断しやすくなります。反対が強い、連絡がつかない、関係が悪く話し合いができないといった場合に、持分の売却や、共有物分割請求・所在等不明共有者の制度といった法的な手段を検討します。
全体を売るなら一般の不動産会社に、持分だけを売るなら共有持分の買取業者に査定を頼みます。どちらを選ぶか迷っているなら、両方に査定を頼んで「全体で売った場合」と「持分だけを売った場合」の差を数字で確かめておくと、STEP2の判断がしやすくなります。
査定には、登記事項証明書、固定資産税の納税通知書(課税明細書)、間取り図や購入時の資料があれば用意します。共有者との関係やこれまでの話し合いの経緯も、伝えられる範囲で正確に伝えたほうが、業者の提示額のぶれが小さくなります。
提示額が出たら、金額だけでなく契約条件を比べます。確認したいのは次の点です。
- 提示額から差し引かれる費用(測量費・残置物処分費・登記費用など)が無いか
- 仲介手数料がかかるか(業者の直接買取ならかからない)
- 契約不適合責任が免除されるか(引き渡し後に雨漏りや設備の故障が見つかっても、売主が責任を負わない条件か)
- 手付金の額と、決済・入金の時期
- 契約後に買主側の都合で減額される条件が入っていないか
古い実家の持分を売る場合、契約不適合責任の免除はとくに重要です。業者の直接買取では免除になるのが一般的ですが、契約書に明記されていなければ、引き渡し後に修繕費を請求されるおそれがあります。
条件に納得したら売買契約を結びます。持分だけの売却なら契約するのは自分と買主だけで、他の共有者の署名や押印はいりません。
決済の日には、買主から代金を受け取るのと同時に、司法書士が持分の移転登記を申請します。売主が用意するものは、登記識別情報(または登記済権利証)、実印、発行から3か月以内の印鑑証明書、本人確認書類、固定資産評価証明書などです。登記識別情報や権利証を紛失している場合でも、司法書士の本人確認情報などで手続きできるため、早めに伝えておくと準備が間に合います。
不動産を売った翌年の2月16日から3月15日までに、確定申告をします。売却益が出た場合はもちろん、空き家の特別控除などの特例を使う場合も、申告しなければ特例は受けられません。
全体を共有者全員で売った場合でも、確定申告は共有者がそれぞれ自分の持分について行います。売却代金や経費を持分どおりに分けていないと、申告内容が共有者間で食い違う原因になるため、決済の時点で精算書を作っておくと申告が楽になります。売却益が出ず損失になった場合は原則として申告の義務はありませんが、特例を使う場合など申告が必要なケースもあるため、判断に迷うときは税務署か税理士に確認すると確実です。
横浜で共有名義の不動産売却を相談するならどこ?
相談先は、共有者との関係がどこまで進んでいるかで選びます。全員が売却に同意しているなら一般の不動産会社、持分だけを売るなら共有持分の買取業者、共有者と争いになっているなら弁護士が窓口になります。
| 状況 | 相談先 | 期待できること |
|---|---|---|
| 共有者全員が売却に同意している | 一般の不動産会社 | 市場価格での全体売却 |
| 自分の持分だけを売りたい | 共有持分の買取専門業者 | 同意不要・短期間での現金化 |
| 共有者と対立している、相手が行方不明 | 不動産問題に詳しい弁護士 | 交渉の代理、共有物分割請求、所在等不明共有者の手続き |
| 相続登記や名義の整理だけしたい | 司法書士 | 相続登記、持分移転登記 |
共有者全員が売却に同意しているなら一般の不動産会社
全員の同意があるなら、共有持分の専門業者に頼む必要はありません。一般の不動産会社に仲介を依頼し、市場で買主を探すのが最も高く売れる方法です。
横浜は、駅ごと・区ごとに相場が細かく分かれる地域です。物件のある区や沿線での売却実績が多い会社に査定を頼むと、根拠のある価格が出やすくなります。複数社に査定を頼み、提示額の高さより、近隣の成約事例をもとに価格を説明できるかで比べると、売り出し後に大幅な値下げを迫られる失敗を避けられます。
仲介手数料は、売却価格が400万円を超える場合、上限が「売却価格×3%+6万円」に消費税を加えた額です。共有者全員で売る場合は、この手数料を売却代金から差し引いてから持分に応じて分けるのが一般的です。
自分の持分だけ売りたいなら共有持分の買取専門業者
他の共有者の同意が得られない、または同意を求めたくないなら、共有持分を専門に扱う買取業者が相談先になります。一般の不動産会社は持分だけの売却を扱わないか、扱っても専門業者に紹介することが多いためです。
横浜市内に拠点を置く地元の業者と、全国対応の大手業者のどちらも、横浜の物件の持分買取に対応しています。地元業者は区ごとの相場や接道・がけ地の事情に詳しく、全国対応の業者は弁護士との連携や再販売の販路が広い傾向があります。どちらが有利かは物件次第なので、両方から査定を取って比べるのが確実です。
共有者とのトラブルがあるなら不動産問題に詳しい弁護士
共有者と感情的に対立している、すでに相手から内容証明が届いている、行方不明の共有者がいるといった場合は、弁護士に相談します。弁護士は代理人として共有者と交渉でき、まとまらなければ共有物分割請求の訴訟や、所在等不明共有者の持分取得・譲渡の申立てまで一貫して任せられます。
相談先を探すときは、神奈川県弁護士会の法律相談センターや、横浜市の市民相談室の法律相談を窓口にする方法があります。収入が一定以下なら、法テラスの無料法律相談や、弁護士費用の立替え制度を使える場合があります。
弁護士費用はかかりますが、持分を業者に安く売る前に、法的にどこまで取り分を確保できるかを確認しておく価値はあります。相談の結果、持分売却が最善と判断できれば、納得して売ることができます。
買取業者を選ぶときに確認したいポイント(実績・弁護士との連携・契約内容)
共有持分の買取業者は、規模や得意分野の差が大きく、選び方で手取り額も売却後のトラブルの起きやすさも変わります。依頼する前に、次の点を確認しておくと失敗を避けやすくなります。
| 確認項目 | 確認する内容 |
|---|---|
| 宅地建物取引業の免許 | 会社の公式サイトや国土交通省の検索システムで免許番号を確認できるか |
| 共有持分の買取実績 | 横浜や神奈川での買取件数、自分と似た物件(戸建て・マンション・再建築不可など)の扱いがあるか |
| 弁護士・司法書士との連携 | 買取後の共有者との交渉や登記を、専門家と連携して進める体制があるか |
| 査定額の根拠 | 持分相当額からどのくらい、なぜ下がるのかを説明できるか |
| 契約内容 | 契約不適合責任の免除、手数料の有無、契約後の減額条件が書面で明記されているか |
| 他の共有者への対応方針 | 買い取ったあと、残りの共有者とどう交渉するのかを説明できるか |
とくに注意したいのが、査定の段階では高い金額を示し、契約直前や契約後に理由をつけて減額する業者です。査定額の根拠と、減額がありうる条件を最初に書面で確認しておくと、この種のトラブルは防げます。
共有名義不動産の売却に関するよくある質問
まとめ|横浜の共有名義不動産は持分だけの売却も検討できる
横浜の共有名義の不動産は、共有者全員の同意があれば全体を、同意が得られなくても自分の持分だけなら単独で売却できます。
- 手取り額を最大にしたいなら、共有者全員で全体を売るのが第一の選択肢
- 同意が得られない、話し合いができないなら、持分だけを買取業者に売る方法がある。価格は持分相当額の3〜6割程度が目安
- 連絡がつかない共有者がいるなら、所在等不明共有者の制度で持分の取得や全体の売却ができる
- 横浜市内でも区によって地価が2倍以上違い、持分の価格もそれに比例して変わる
- 住宅ローンが残る家、マンション、再建築不可の土地は、それぞれ売る前に確認すべき点がある
最初の一歩は、法務局で登記事項証明書を取り、共有者と持分割合を確認することです。そのうえで、全体を売った場合と持分だけを売った場合の査定額を比べると、自分にとってどちらの方法が得かを数字で判断できます。

