隣の家と壁や屋根がつながった長屋を相続した、住み替えたいけれど隣家が切り離しに応じてくれない、不動産会社に相談したら「長屋は難しい」と言われた。横浜には、こうした事情で売却が止まっている長屋が少なくありません。
結論から言うと、切り離しできない長屋も、切り離さずにそのままの状態で売却できます。自分の住戸を売ること自体には、多くの場合、隣家の同意は要りません。
この記事では、隣家の同意が必要になるケースの見分け方、切り離せない理由、横浜で使える4つの売却方法と長屋に対応する買取業者の比較、横浜市の接道条件など売却前に押さえたい点を、順を追って解説します。
横浜で切り離しできない長屋も売却できる
切り離しや解体ができない長屋でも、建物をつながったままの状態で売ることはできます。売却に必要なのは「切り離すこと」ではなく、「自分が売れる権利を持っていること」と「その状態の長屋を買う相手がいること」の2つです。
隣家の同意が必要になるかどうかは、長屋をどんな形で所有しているかで決まります。まずは自分の長屋がどの形に当たるかを確認しましょう。
長屋は切り離さずにそのまま売却できる
長屋の売却は、切り離し工事を前提にしなくても進められます。買主は「隣とつながった長屋の1住戸」をそのまま買い、そのまま住む・貸す・リフォームして使う、という形で引き継ぎます。
一般の個人の買主には、住宅ローンが組みにくい、将来建て替えられるかわからないといった理由で敬遠されやすい物件です。一方で、長屋や連棟住宅を専門に扱う買取業者や投資家は、隣家との調整や再建築の可否も含めて価格をつけるため、現況のままでも買い手になります。
切り離しをしてから売ろうとすると、隣家との交渉、工事費、建築基準法の確認が先に必要になり、売却までの時間も費用も増えます。切り離せないことがわかっている長屋は、「切り離さずに売る」前提で売り方を選ぶほうが現実的です。
隣家の同意がなくても売却できる場合がある
自分の住戸を売るだけなら、多くのケースで隣家の同意は要りません。同意が必要になるのは、隣家と共有している部分に手を加えるとき(切り離し・解体・大規模な改修)と、建物そのものを隣家と共有しているときです。
長屋の所有の形は、大きく3つに分かれます。
| 所有の形 | 登記の特徴 | 自分の住戸の売却 | 切り離し・解体 |
|---|---|---|---|
| 住戸ごとに建物と土地を単独で所有 | 住戸ごとに別々の建物として登記、土地も住戸ごとに分筆 | 隣家の同意なしで売れる | 隣家の承諾が必要 |
| 区分所有(区分建物として登記) | 「一棟の建物の表示」と「専有部分の建物の表示」がある | 隣家の同意なしで売れる(専有部分と敷地の権利をセットで売る) | 共用部分の変更として、他の区分所有者の決議・承諾が必要 |
| 建物全体を隣家と共有 | 1つの建物に複数の所有者と持分が記載されている | 自分の持分だけなら単独で売れる。建物全体を売るには共有者全員の同意が必要 | 共有者全員の同意が必要 |
区分所有の長屋は、マンションと同じ区分所有法(e-Gov法令検索)の対象です。区分所有建物には長屋も含まれると、法務省の資料も説明しています。専有部分(自分の住戸)は、その敷地の権利と一緒であれば、ほかの区分所有者の同意なしに売れます。ただし、専有部分と敷地の権利を切り離して別々に売ることはできません(区分所有法22条)。
屋根や外壁、隣家との境の壁は共用部分になるため、これを壊す切り離しには同意の手続きが要ります。区分所有法17条は、共用部分の大きな変更には集会の決議が必要で、ほかの住戸の使い方に特別な影響が出るときはその住戸の所有者の承諾が要ると定めています。決議の要件は2026年4月1日施行の改正で見直されているため、手続きの細かな部分は専門家に確認してください。
住戸ごとに単独で所有している長屋でも、壁や基礎、屋根は隣家とつながっています。大阪府の長屋の維持保全に関する資料は、基礎・屋根・外壁・柱・梁が一棟でつながっている長屋は、ほかの所有者の承諾なしに一部だけ解体や切り離しはできないとし、無理な工事は倒壊や雨漏りの原因になると注意しています。
建物全体を共有している場合は、民法251条により、共有物を変更するにはほかの共有者の同意が必要です。共有持分だけを売ることはできますが、買主は隣家と建物を共有することになるため、買い手は共有持分の買取に対応する業者にほぼ限られます。
どの形に当たるかは、法務局で取得できる登記事項証明書で確認できます。建物の欄に「一棟の建物の表示」があれば区分所有、所有者欄に複数の名前と持分が並んでいれば共有です。
解体や切り離しが難しい場合は、長屋に対応する買取業者への相談も選択肢になります。
長屋を切り離しできない4つの理由
長屋の切り離しが進まない原因は、隣家との関係、建物の構造、法律、費用のどれか、または複数が重なっていることがほとんどです。ここでは、それぞれがなぜ壁になるのかを整理します。
どの理由に当てはまっても、売却そのものができなくなるわけではありません。切り離しを諦めて「つながったまま売る」方向に切り替えれば、ここで挙げる問題の多くは買主側が引き受ける前提で価格に織り込まれます。
隣家の所有者から切り離しの同意が得られない
切り離しは隣家の建物にも手を加える工事なので、隣家の承諾が欠かせません。隣家が高齢で話し合いが難しい、所有者が亡くなって相続人が決まっていない、連絡先がわからないといった事情で、交渉そのものが始められないこともあります。
隣家が慎重になるのは、切り離した後に自分の家の壁がむき出しになる、強度が落ちる、雨漏りしたときの補償が不安、といった理由が多いためです。同意の要否が所有の形でどう変わるかは、前のセクションの表で確認できます。
壁・柱・屋根・基礎が隣家と一体化している
長屋は、住戸の境の壁(界壁)を隣家と共有し、屋根や基礎も一続きで造られているのが一般的です。古い木造の長屋では、柱や梁が隣の住戸にまたがっていることもあります。
この状態で片側だけを取り壊すと、残る隣家は支えの一部を失い、建物のバランスが崩れます。境の壁を残す場合も、その壁を外壁として使えるように仕上げ直し、防水や補強をしなければなりません。
築年数の古い長屋ほど図面が残っておらず、解体してみるまで構造がわからないこともあります。工事の範囲が読めないこと自体が、切り離しを難しくしています。
切り離すと建築基準法の条件を満たせなくなる
長屋は、全体で1つの建物として建築基準法の条件を満たしています。切り離すとそれぞれが独立した建物になるため、住戸ごとに条件を満たす必要が出てきます。
特に問題になるのが接道です。建築基準法43条により、建物の敷地は道路に2m以上接していなければなりません。長屋全体では道路に接していても、切り離した後の住戸の敷地が道路に2m以上接していなければ、その住戸は建て替えができない状態になります。
横浜市は、長屋について独自のルールを横浜市建築基準条例で上乗せしています。
- 長屋の各住戸の主要な出入口は、道路に面していなければならない(住戸数が少ない長屋などには、幅2m以上の通路を設ける等の緩和あり。第23条の3)
- 木造などの長屋は、住戸どうしがつながっている部分の長さを2.7m以上にしなければならない(第23条の4第5項)
条例の解説では、住戸の間を物置などの短い部分でつないで長屋として建て、後でその部分を取り壊して接道の規定に違反するケースが少なくないと説明されています。つながっている部分を減らしたり壊したりする工事は、残った建物や切り離した住戸を違反状態にするおそれがあるということです。
切り離し工事や隣家の補修費用が高額になる
切り離しには、自分の住戸の解体費だけでなく、隣家側の壁を外壁として仕上げる工事、防水、構造の補強、建築士による安全確認などの費用がかかります。隣家側の工事費をだれが負担するかは交渉で決めることになり、売主側が負担を求められることも少なくありません。
長屋は建物が密集した場所に建っていることが多く、重機が入れずに手作業で解体する分、工期も費用も増えます。金額は構造や隣家の状態で大きく変わるため、相場を一律に示すことはできません。複数の解体業者から、隣家側の補修を含めた見積もりを取って判断します。
横浜市には木造住宅の解体費用を補助する制度がありますが、長屋と共同住宅は、倒壊等の危険がある「特定空家」と認定された場合を除いて補助の対象外です。長屋の切り離しは、原則として全額を自己負担で進めることになります。
切り離しできない長屋を横浜で売却する4つの方法
切り離しできない長屋の売り方は、買取業者に売る、仲介で買主を探す、隣家に買ってもらう、長屋全体をまとめて売る、の4つです。価格を優先するなら仲介、手間や売却期間を優先するなら買取が候補になります。
| 売却方法 | 向いている人 | メリット | デメリット |
|---|---|---|---|
| 長屋に対応する買取業者 | 早く確実に手放したい、隣家と交渉したくない | 現況のまま売れる、売却時期が読める、契約不適合責任を免除する条件が多い | 価格は仲介で売れた場合より低くなりやすい |
| 不動産仲介 | 時間がかかっても高く売りたい | 相場に近い価格を狙える | 買主が見つかるまでの期間が読めない、住宅ローンが使えず現金で買える人に限られることが多い |
| 隣家への売却 | 隣家との関係が良好 | 隣家は土地をまとめて使えるため、高く買ってもらえる可能性がある | 隣家に購入意思と資金があることが前提 |
| 長屋全体の売却 | ほかの住戸の所有者も売りたがっている | 一体の土地として評価され、建て替え用地として買い手の幅が広がる | 全員の合意と条件調整に時間がかかる |
長屋・連棟住宅に対応する買取業者へ売却する
買取は、不動産会社が買主になって直接長屋を買い取る方法です。長屋や連棟住宅を扱う業者は、買い取った後に賃貸やリフォーム、隣家との調整を自社で行う前提で値段をつけるため、切り離しや解体をしないまま売れます。
買主を探す期間がないので、査定から現金化までの見通しが立てやすいのが強みです。家の中に家具などが残っていても、そのまま引き取る業者もあります。売主が個人で、買主が不動産会社の場合、引き渡し後の不具合について責任を負わない(契約不適合責任を免除する)条件で契約できることが多く、古い長屋を売るときの不安を減らせます。
価格は、仲介で一般の買主に売れた場合より低くなりやすい点は押さえておきましょう。業者は買い取った後の工事費や、売れるまでの期間のリスクを差し引いて金額を出すためです。
不動産仲介で現況のまま買主を探す
仲介は、不動産会社に買主を探してもらう方法です。買取より高い価格を狙えますが、切り離しできない長屋は住宅ローンの審査が通りにくく、買主は現金で買える人や投資家に絞られます。
売り出してから買主が見つかるまでの期間は物件によって大きく違い、反響がないまま数か月がたつこともあります。その間も固定資産税や建物の管理費用はかかり続けます。仲介を選ぶなら、長屋の売却実績がある会社に依頼し、一定期間売れなければ買取に切り替える、と最初に決めておくと判断がぶれません。
仲介で売る場合、引き渡し後に雨漏りなどの不具合が見つかると、売主が契約不適合責任を問われることがあります。免責の範囲は契約で決めるため、契約書の内容を必ず確認しましょう。
隣家の所有者に買い取ってもらう
隣家にとって、隣の住戸を手に入れることは、土地を広げて建て替えやすくするチャンスになります。長屋全体を1人が持てば切り離しの問題もなくなるため、ほかの買主より高い価格を出してもらえることがあります。
隣家に話を持ちかけるときは、いきなり金額を示すより、「売却を考えているので、購入の意向があれば先にお伝えしたい」と打診するほうが話が進みやすくなります。価格は不動産会社の査定額を目安にし、契約書の作成や登記は不動産会社や司法書士に任せると、後のトラブルを防げます。
隣家に購入意思や資金がなければ成立しない方法なので、ほかの売却方法と並行して検討しましょう。
他の所有者と協力して長屋全体を売却する
長屋のほかの住戸の所有者も売却を考えているなら、全員でまとめて売る方法があります。長屋全体と敷地が1つになれば、建て替え用地として評価できるため、ハウスメーカーや開発業者も買主の候補に入ります。
ただし、所有者全員が売却に同意し、価格の分け方や売却時期、残置物の片付けなどの条件をそろえる必要があります。人数が多いほど調整に時間がかかり、1人でも反対すれば成立しません。ほかの所有者が空き家のまま放置している、相続で売却を考えている、といった事情がある場合に検討する価値があります。
横浜で長屋の買取業者を選ぶときのポイント
長屋の買取業者は、長屋・連棟住宅を買い取った経験があるか、横浜市内に対応しているか、現況のまま買い取れるか、条件をわかりやすく説明してくれるかの4点で選びます。訳あり物件全般を扱う業者は多いものの、長屋や連棟住宅への対応を公式サイトで明記している業者は限られます。
横浜市内の長屋に対応し、長屋・連棟住宅の買取を公式サイトで案内している業者は次のとおりです。
| 業者 | 拠点 | 長屋・連棟住宅への対応 | 横浜市への対応 | 再建築不可・共有持分 | 残置物 | 契約不適合責任 | 現金化の目安 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| フィリアコーポレーション | 東京都板橋区 | 屋根や基礎がつながり物理的に切り離しできない連棟物件も対象 | 横浜市・川崎市・相模原市を対応エリアに明記 | どちらも対応 | 撤去費用は同社が負担 | 直接買取では免除 | 最短1週間以内 |
| ドリームプランニング(URUHOME) | 横浜市中区 | 連棟式建物の買取を得意分野に掲げる | 横浜市に本社、横浜・川崎を中心に対応 | どちらも対応(借地・底地も対応) | そのままで可 | 免責で買取 | 最短2日で買い取った実績あり |
| スグウル | 東京都新宿区 | 神奈川県内で連棟式の空き家を買い取った事例を公開 | 横浜市向けの買取ページあり | どちらも対応(借地も対応) | そのままで可 | 査定時に確認 | 最短2日 |
対応内容や期間は変わることがあるため、申し込み前に各社の公式サイトで確認してください。
フィリアコーポレーションは、隣家と屋根や基礎がつながって切り離せない連棟物件や、隣人と連絡が取れず建て替えできない長屋も買取の対象と明記しています。切り離しできないことがはっきりしている長屋を持つ人が、最初に相談しやすい業者です。
ドリームプランニングは横浜市中区に本社を置き、連棟式建物の相談を全国から年間300件以上受けていると案内しています。共有者と協議しなくても買い取るとしているため、建物を隣家と共有していて話し合いが進まない人にも合います。
スグウルは、連棟式で単独では再建築できない空き家を神奈川県内で買い取った事例を公開しています。最短2日での現金化をうたっており、相続した長屋を早く手放したい人の比較先になります。
長屋・連棟住宅の買取実績があり、横浜市内に対応しているか
長屋は、権利関係の確認や隣家との調整、買い取った後の活用まで見通せないと値段をつけられません。長屋や連棟住宅の買取実績がある業者ほど、隣家の同意が取れない、再建築できないといった事情も含めて査定できます。
実績は、公式サイトの買取事例やサービスページで「長屋」「連棟」「テラスハウス」といった言葉で紹介されているかで確認できます。事例に所在地や建物の状態が書かれていれば、自分の長屋と似た条件の物件を扱った経験があるかも判断できます。
横浜市内への対応も欠かせない条件です。対応エリア外の業者は現地調査に時間がかかったり、横浜市の条例や道路の事情を踏まえた査定ができなかったりします。対応エリアに横浜市が明記されているか、横浜市の物件の買取事例があるかを確認しましょう。
切り離し・解体なしの現況買取や再建築不可物件に対応しているか
切り離しできない長屋を売るなら、建物をつながったまま買い取る「現況買取」に対応していることが前提です。査定の段階で「切り離してから」「更地にしてから」と条件を付ける業者では、長屋の問題は解決しません。
切り離せない長屋は、切り離した後の接道を満たせず再建築できない物件であることも多いため、再建築不可物件の買取に対応しているかもあわせて確認します。共有持分や借地の長屋であれば、それぞれへの対応も見ておきましょう。
家の中の家具や不用品をそのまま引き取ってくれるかどうかも、売主の手間と費用に直結します。片付けの負担がなくなれば、遠方に住んでいる相続人でも売却を進めやすくなります。
査定額の根拠や契約条件を明確に説明してくれるか
長屋の査定額は、業者によって差が出やすい分野です。金額だけで比べず、なぜその金額になったのかを説明してもらいましょう。信頼できる業者は、再建築の可否、隣家との関係、建物の状態、買い取った後の活用方法など、価格に影響した要素を具体的に答えてくれます。
査定の際には、次のような点を質問しておくと条件を比べやすくなります。
- 査定額から差し引かれる費用(測量、残置物の処分、解体など)はあるか
- 契約不適合責任は免除されるか、免除の範囲はどこまでか
- 手付金の額と、残代金が支払われる時期
- 契約後に査定額が下がることはあるか、それはどんな場合か
切り離しできない長屋は、業者によって活用の仕方が違うため、同じ物件でも査定額や条件に差が出ます。1社だけで決めず、紹介した業者を含めて2〜3社に査定を依頼し、金額と契約条件を並べて比べてから売却先を選びましょう。
切り離しできない長屋の売却価格は何で決まる?
切り離しできない長屋の売却価格は、一般の戸建てと同じく立地・築年数・建物の状態で土台が決まり、そこに「再建築できるか」と「長屋のどの位置の住戸か」が大きく上乗せ・差し引きされます。長屋は条件の違いが価格に強く出るため、近所の戸建ての相場をそのまま当てはめることはできません。
立地・築年数・建物の状態が査定額に影響する
長屋でも、駅からの距離や周辺の住宅需要は価格の土台になります。横浜市内でも、駅に近く賃貸需要のあるエリアの長屋は、投資家や買取業者が賃貸物件として活用しやすいため値段がつきやすくなります。
築年数が古い長屋は建物の評価が低く、土地の権利が価格の中心になります。雨漏り、傾き、シロアリの被害、給排水管の劣化などがあると、買主は修繕費を見込んで価格を下げます。室内をきれいにしても、こうした構造や設備の問題は査定で差し引かれるため、売却前に高額なリフォームをして元を取るのは難しいと考えておきましょう。
再建築の可否が評価を大きく左右する
切り離しできない長屋の価格に最も強く影響するのが、再建築ができるかどうかです。再建築できない物件は、将来建て替えられないうえに住宅ローンの審査が通りにくく、買主が現金で買える人や業者に限られるため、評価が大きく下がります。
長屋は全体として建っている限り問題がなくても、切り離した後や取り壊した後に住戸単位で建て替えようとすると、接道の条件を満たせないことがあります。買主はこの点を必ず確認するので、再建築できるかどうかがわからないままだと、業者は低いほうの評価で査定せざるを得ません。
自分の長屋が再建築できるかは、横浜市の道路情報や条例の条件で確認できます。調べ方は、この後の売却前の注意点のセクションで説明します。
長屋の端の住戸と中央の住戸では条件が異なる
同じ長屋でも、端の住戸と中央の住戸では売りやすさが違います。
端の住戸は、隣家とつながっている壁が片側だけです。切り離すとしても工事が1か所で済み、側面に道路や空き地があれば採光や出入りの条件も比較的良いことが多くなります。敷地が道路に2m以上接していれば、切り離した後に建て替えられる可能性もあるため、中央の住戸より評価されやすい位置です。
中央の住戸は両側を隣家に挟まれているため、切り離しには両隣の協力が必要になり、工事の難易度も上がります。間口が狭く、敷地が道路に接する幅が2mに届かないこともあります。そのため、中央の住戸は単独で建て替えることが難しく、現況のまま使う前提か、隣家とまとめて活用する前提で評価されることが多くなります。
中央の住戸を持っている場合は、隣家への売却や長屋全体での売却も視野に入れると、より高く評価してくれる買主に出会える可能性があります。
横浜で長屋を売却する前に確認したい注意点
査定を依頼する前に、登記の名義、境界、接道と再建築の可否、建物の不具合の4点を確認しておくと、査定額の根拠を理解しやすくなり、契約後のトラブルも防げます。特に接道と再建築の可否は、横浜市の公開情報で自分で調べられます。
土地・建物の登記名義と所有権を確認する
最初に、土地と建物の登記事項証明書を法務局で取り、所有者の名義を確認します。売却できるのは登記上の所有者だけなので、亡くなった親の名義のままになっている場合は、先に相続登記をして名義を変える必要があります。相続登記は2024年4月1日から義務になり、相続で不動産を取得したことを知った日から3年以内の申請が求められています。
あわせて、建物が区分所有として登記されているか、隣家と共有になっているか、土地が住戸ごとに分かれているかも確認します。所有の形によって、隣家の同意の要否や売れる権利の範囲が変わるためです(詳しくはこの記事の最初のセクションを参照)。土地が借地の場合は、地主の承諾が必要になります。
隣地との境界や越境の有無を確認する
土地を住戸ごとに所有している長屋では、隣家との境界がどこにあるかが売却の前提になります。境界標(境界を示す杭や金属のプレート)があるか、法務局に地積測量図が残っているかを確認しましょう。
境界がはっきりしない場合は、土地家屋調査士に測量を依頼し、隣家の立ち会いのもとで境界を確定させる方法があります。買取業者の中には、境界が未確定のままでも買い取る業者もあるため、測量費をかける前に査定で確認すると無駄がありません。
越境は、屋根の軒やひさし、雨どい、エアコンの室外機、ブロック塀などが隣地に出ている、または隣家のものが自分の土地に出ている状態です。越境があっても売却はできますが、買主に伝えておかないとトラブルになります。気づいている越境は、査定のときに伝えましょう。
横浜市の接道条件と再建築の可否を確認する
長屋が再建築できるかどうかは、敷地が建築基準法上の道路に2m以上接しているかで判断します。横浜市では、前面の道路が建築基準法上の道路かどうかを、横浜市行政地図情報提供システム「i-マッピー」の指定道路図で確認できます。道路部分をクリックすると、道路の種別が表示されます。
横浜市は、間違いが起きたときの影響が大きいため、道路の種別についての電話での問い合わせは受け付けていません。指定道路図に線が引かれていない道は、まだ判定されていない道路で、建築局建築指導課(045-671-4531)への相談が案内されています。
道路に2m以上接していない敷地でも、建築基準法43条2項の認定や許可を受けて建てられる場合があります。横浜市では建築局市街地建築課(045-671-4510)が窓口です。旗竿地のように細い通路で道路につながる敷地は、横浜市建築基準条例で、通路の長さが15mを超え25m以下なら幅3m以上、25mを超えるなら幅4m以上が必要とされています。
長屋の場合は、ここに前のセクションで触れた条例の長屋規定(各住戸の主要な出入口が道路に面していること、木造などの長屋の住戸どうしのつながりが2.7m以上あることなど)が加わります。切り離しや建て替えを考える買主は、こうした条件を個別に調べたうえで価格を決めます。売主として細かく判断する必要はありませんが、前面道路の種別と、敷地が道路に接している幅を把握しておくと、査定額の説明を理解しやすくなります。
建物の不具合の告知と契約不適合責任の扱いを確認する
雨漏り、建物の傾き、シロアリの被害、給排水管の故障など、売主が知っている不具合は買主に告知します。民法572条は、契約で売主の責任を免除する特約を結んでも、売主が知っていながら告げなかった事実については責任を免れないと定めています。不具合を隠して売ると、後で損害賠償や契約解除を求められるおそれがあります。
契約不適合責任は、引き渡した建物が契約の内容と違っていた場合に売主が負う責任です。仲介で個人に売る場合は、免責の範囲や期間を契約で決めますが、古い長屋でも一定の責任を負うのが一般的です。不動産会社が買主になる買取では、契約不適合責任を免除する条件で契約できることが多く、引き渡し後に修理費を請求される心配を減らせます。免除の範囲は業者によって違うため、契約書で確認しましょう。
家具や家電などの残置物は、仲介では売主が片付けてから引き渡すのが基本です。買取では、残置物をそのまま引き取る業者もあり、その場合は処分費用を査定額に含めて調整します。片付けの費用を自分で負担するか、査定額から差し引いてもらうかを比べて選ぶと、手元に残る金額を正しく比べられます。
切り離しできない長屋を売却するまでの流れ
買取業者に売る場合、物件情報の準備、査定の依頼、条件の比較、契約と引き渡しの4ステップで進みます。仲介と違って買主を探す期間がないため、査定から引き渡しまでの見通しを立てやすいのが特徴です。
STEP1|登記事項証明書など物件情報を準備する
査定の前に、物件の基本情報を手元にそろえます。すべてそろっていなくても査定は依頼できますが、情報が多いほど査定額の精度が上がり、やり取りの回数も減ります。
- 土地・建物の登記事項証明書(法務局で取得)
- 固定資産税の納税通知書(評価額と面積がわかる)
- 長屋の所在地、築年数、間取り、端か中央かの位置
- 雨漏りや傾きなど、わかっている不具合
- 隣家との関係(連絡が取れるか、切り離しの話をしたことがあるか)
- 相続した物件か、住宅ローンが残っているか、借地か
STEP2|長屋に対応する買取業者へ査定を依頼する
長屋・連棟住宅の買取に対応する業者に、電話や問い合わせフォームから査定を依頼します。最初に「隣家と切り離しできない長屋であること」を伝えておくと、対応できるかどうかがすぐにわかり、無駄なやり取りを省けます。
多くの業者は、聞き取りや資料をもとにした査定の後、現地調査をしてから最終的な買取価格を出します。この段階で費用はかからず、査定を受けたからといって売却を決める必要もありません。
STEP3|買取価格や契約条件を比較する
2〜3社から提示された買取価格と契約条件を並べて比べます。比べるのは金額だけでなく、差し引かれる費用、契約不適合責任の扱い、残置物の扱い、代金が支払われる時期です。
条件に納得できない点があれば、遠慮せずに質問しましょう。他社の条件を伝えて交渉することもできます。査定額が高くても、差し引かれる費用が多ければ手元に残る金額は少なくなるため、最終的には「受け取れる金額」と「売却後に負う責任」の2つで判断すると失敗しません。
STEP4|売買契約を結び引き渡しを行う
売却先を決めたら、売買契約を結びます。契約時に手付金を受け取り、決済日に残代金を受け取ると同時に、所有権の移転登記をして引き渡す流れが一般的です。住宅ローンが残っている場合は、決済日に代金で残りを返して抵当権を抹消します。
登記の手続きは司法書士が行います。引き渡しまでに、鍵や権利証(登記識別情報)、本人確認書類、印鑑証明書などを用意しておきましょう。
横浜の長屋売却でよくある質問
切り離しできない長屋の売却について、本文で触れきれなかった疑問に答えます。
借地に建っている長屋でも売却できますか?
売却できます。ただし、借地の上の建物を売ると借地権も一緒に買主へ移るため、地主の承諾が必要です(民法612条)。地主が承諾しない場合でも、地主に不利になるおそれがなければ、裁判所に申し立てて承諾に代わる許可を受ける方法があります(借地借家法19条)。承諾料が必要になることも多いため、まずは地主に売却の意向を伝え、借地の長屋に対応する買取業者に相談すると進めやすくなります。
住宅ローンが残っていても売却できますか?
売却できます。住宅ローンが残っている長屋には金融機関の抵当権が付いているため、決済日に売却代金でローンを完済し、抵当権を抹消してから引き渡すのが一般的な流れです。売却代金だけでローンを返しきれない場合は、差額を自己資金で用意する必要があります。査定を受けたら、ローンの残高と査定額を比べ、手元に残る金額を確認しておきましょう。
相続した長屋が空き家でも売却できますか?
売却できます。先に相続登記をして名義を相続人に変えれば、空き家のままでも売れます。買取なら、家財が残ったままでも引き取る業者があります。
相続した空き家を売るときは、一定の条件を満たすと譲渡所得から最大3,000万円を差し引ける特例があります。ただし、区分所有建物として登記されている建物は対象外で、昭和56年5月31日以前に建てられたことなどの条件もあるため、長屋で使えるかは税務署や税理士に確認しましょう。どこに相談すればよいか迷う場合は、横浜市が設けている「空家のこれから相談窓口」(0120-830-458)も利用できます。
売却にかかる費用や税金はどのくらいですか?
主な費用は、仲介手数料、売買契約書の印紙税、登記費用、譲渡所得税です。
- 仲介手数料:買取で業者に直接売る場合はかかりません。仲介の場合は売買価格に応じた上限があり、国土交通省の資料のとおり、400万円を超える部分は3.3%(税込)などと定められています。800万円以下の空き家などは、事前の説明と合意があれば上限が30万円の1.1倍まで認められています。
- 印紙税:売買契約書に貼ります。軽減措置により、たとえば売買価格が500万円を超え1,000万円以下なら5千円です(国税庁)。
- 登記費用:住宅ローンの抵当権を抹消する登録免許税や、司法書士への報酬がかかります。
- 譲渡所得税:売って利益(譲渡所得)が出た場合にかかります。売った年の1月1日時点で所有期間が5年を超えていれば所得税15%と住民税5%、5年以下なら所得税30%と住民税9%に、復興特別所得税が加わります。
実際の金額は売却価格や取得費によって変わるため、査定額が出た段階で業者や税理士に確認してください。
不動産会社に売却を断られた場合はどうすればよいですか?
一般の仲介会社に断られても、売れないと決まったわけではありません。断られる理由の多くは、住宅ローンを使う一般の買主が見つかりにくいことや、隣家との調整に手間がかかることです。長屋・連棟住宅や再建築不可物件を専門に買い取る業者なら、そうした事情を前提に査定してもらえます。
どこに相談すればよいかわからない場合は、横浜市と空家対策の協定を結んでいる神奈川県宅地建物取引業協会の不動産中央無料相談所(045-633-3035)などの公的な相談先も利用できます。
まとめ
横浜で隣家と切り離しできない長屋も、切り離し工事をしないまま売却できます。押さえておきたいポイントは次のとおりです。
- 自分の住戸を売るだけなら、単独所有や区分所有の長屋では隣家の同意は要らない。同意が必要なのは、切り離しや解体をするときと、建物全体を隣家と共有しているとき
- 切り離せない理由が隣家・構造・建築基準法・費用のどれであっても、つながったまま売る方法を選べば売却は進められる
- 価格を優先するなら仲介、手間と売却期間を優先するなら長屋に対応する買取業者が向いている
- 価格は再建築の可否で大きく変わるため、横浜市の指定道路図で前面道路の種別と接道の幅を把握しておくと、査定額の根拠を理解しやすい
まずは登記事項証明書で長屋の所有の形を確認し、長屋・連棟住宅の買取に対応する業者2〜3社に査定を依頼しましょう。切り離しできない事情を最初に伝えれば、現況のまま買い取れるかどうかと、おおよその価格がわかります。

